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2007年11月30日金曜日

ワイはアホや!

字はマウスで書く必要は無いんや…w
セリフや擬音はワイのスキャンした字で調整すればええんやな…。
何とか工夫すれば、きっと…。

curse0.jpg



きっとマシに…w


ゲームなんかでよく見るフランベルジュ(BCFでも出てくる)って調べてみると、すごい武器っすね…
美しい波形が肉を切り裂く。いや、切り開くと言ってもいい感じなんだろなぁ。
プルプル…

2007年11月27日火曜日

おぼっちゃまくんを読んだので茶魔語ぶぁい!

みなさま!ドクローさまでしゅ!
最近ぽっくん、久しぶりにおぼっちゃまくんを読んだとでしゅ。
懐かしくて、おもしローソク攻めぶぁい!←(北海道 FCA君の作品)

今回もおもいっきり18禁画像でしゅよ!へけけっw
でもこれはちょっと実験的な作品なんでしゅ。
単なる静止画ばっかり描いてると流石に飽きるとでしゅよ…。
新たなる表現にチャレン自慰でしゅ!←(東京都 ゆっくんの作品)

しかし、どうしようもない問題が発生してしまったとぶぁい…。
それはぽっくんの字が下手過ぎるという問題なんでしゅ!
へけーーっしゅww 
字が下手なうえにマウスなもんでしゅから堪らんちゅうぶぁいw←(大阪府 ひげ君の作品)




最近は川本真琴にハマってるのでしゅ。
「微熱」って曲が素敵っしゅよ!

2007年11月17日土曜日

何か色々頑張り過ぎちゃった画像

更に髪の毛の問題が解決しつつあるようだモ!
汗ばんだ肉体を描こうと思ったんだけど、どうも難しかった。
液体もなかなか難しい。
水滴のように見えないといけないもんなぁ…。
水滴といっても粘り気のあるもの等色々あるし、これも試行錯誤するしかない。
今回は瞳に映り込みまで取り入れたものの、あんまし効果が出てないような…w
もうちょっと絵柄的に目を大きくしたほうがいいかもしれん。

18禁です。

kinpatu0.jpg


ちと修正しました

2007年11月7日水曜日

チュパグルイ神話/Two books of Destiny

6571字
ちょっとダークな感じ。

最近夢野久作にハマる。
青空文庫で読めます。
短編も多くあって読みやすい。
「あやかしの鼓」は伝統芸能に少々関わっている身であるので、面白かった。

*Two Books Of Destiny*
私は隠された真実という物が何処かで埋もれている、ということを広く知らしめたいという熱意に駆られている。
というのも、私がある古本屋で、とある本を見つけたからだった。
 私は歯牙ない全くの平凡な大学生で、このままでは何も素晴らしい思い出等残せないと毎夜何か、焦っていた。
何をするにも、友人とイベント等企画しても、
「ある未来に今の出来事は思い出と化すのか…」という、予測めいたものを考えると、途端に自分が冷めてしまうのがわかった。
そういった経緯から、私は人との交流をある一時期、断つことにした。
孤独から学ぶものも多い。
私はその孤独から、ふと本を読みたいという心境へ到った。
学術書でもなく、今流行りの云々ではない。
売れずに人の目に触れる事もなかったような本を、である。
過去の悩み、苦しんだ人々が残した思いの欠片が、
宗教における至言や、偉人の金言に埋もれ、残っているかも知れないと思ったからだ。
 私は夏休みに、市内でもかなり古い店へ入ると、そこには、
思い出すだけでも気持ちの悪い店番がいた。
おそらくその店主の娘か、嫁か、何れかであろう。
年は40を越えているように見えるが、おそらく30代ではなかろうか?
そして、店へ入った客に対しては、「いらっしゃいませ」等といった挨拶もなく、只、眺めているのであった。
そのことが更に、イメージを悪くし、大変容姿も醜く映る。
この時点で、誰しもが想像したくもないし、その店には絶対行きたくないと思うだろう。
私もそうである。
しかし、そこで私はその、とある本を見つけたのだ。
 私は、その気持ちの悪い店番が(本当に気持ち悪かったのだ!)視界に入らないようにして、本棚を見渡していると、やはり下らなく、馬鹿馬鹿しく思えるような代物ばかりで、少々失望した。
高名な著者の貴重な本というのもありはしたのだが、それは貧乏学生の私には手が出ないし、そもそもの目的は、自分にとっての所謂ダイヤモンドの原石探しである。
私はこの手の店に入ったのは初めてで、その空気を新鮮と感じるはずなのであるが、やはりその店番のせいで早く立ち去りたいと思うようになった。
膝の高さに堆(うずたか)く積まれた卑猥な本を一瞥(いちべつ)して帰ろうとすると、その中のあるビニールで包まれている本が私のジーンズに引っ掛かり、落してしまった。
私は、「ああ」とその本を手に取り元に戻すと、その気持ちの悪い店番が怪訝(けげん)な顔をするかと思いきや、淡々と私を見つめている。
「ああ!夢に出てきそうだ!やめてくれ!」
と、私は叫びたい気持ちで天を仰いだのだが、その目線の先に、その本があったのだ!
 私はその背表紙に、不思議な魅力を感じた。
その背表紙はホログラムになっていて、見る角度によって、変わるのだ。本の題名が!
私はまず、左下から眺めてみると、
  Book of Destiny LEFT WING
顔を傾けて、右下から眺めてみると、
  Book of Destiny RIGHT WING
と、見える。
日本語で言えば、運命の本、左翼、右翼。と言った所だろうか?
私はこの時点で、相当新しい本だと思って、少々残念な気持ちになったのだが、こんな本があるのは知らなかった。
早速中身を試し読みしてみようと開くと、中身は何も書かれて無かった。
おや?と私はページを捲るのだが、真っ白である。
著者も解らない、出版社もわからないのだ。
これはどういうことだろう?透かしなのだろうか?と光りにかざしてみるも何も見えない。
ふむ、と私は困り果ててしまった。
まぁ値段を見てみると405円で激安なので、早速購入を決めた。
店番に本を差し出した。
もちろん俯いてシャイなフリをしてである。
私はそそくさと店を出ると、宝物…
そうだ!正にダイヤモンドの原石を手に入れた気分で、飛んで家へ帰った。
 自宅に帰ると、早速その本を詳細に調べてみるのだが、何もわからなかった。
「おかしい、あの店番にボられたのだろうか?」
と、思いつつも、とりあえずその本を机の上に置いた。
私は講義のレポートを作成しなくてならなかったので、悶々と考えながら、途中まで終えると、食事をし、風呂に入った。
風呂の中で、再びあの本について考えてみた。
色々とアイデアが湧いてくる。
あぶり出し、鏡に映す、水に浸ける等、考えて早速風呂上がりに試してみようと思った。
私はその本を思い付くまま、アイデアを全て試してみたのだがダメだった。
火であぶる、水に浸ける事だけは出来なかった。流石にそれでは本を痛めてしまう。
疲れた私は、眠ることにした。まだまだ時間はあるのだ。
うとうととしていると、浅い眠りの中で、私は夢を見た。

ヴギャァーーーーゥ!!ブポルシ、シポグァーお前が手に入れやがったのか!?小野よ!
あん?読み方が解らないだと!!
運命の本は、読むものじゃねー。
伝達するんだよ!意味解るか?
この本を創りだせる奴は、世界を変えることが出来る!
小野よ、今まで幾多の人間が運命の本を手にしては、失敗した。
ある男は成功して世界を変えたが…それは近い時代では80年ほど前の出来事だ。
世界は変わったよな?
小野よ!お前は寝てる暇ねーぞ!さっさと起きて記憶しとけ!
このままだったら、19年だぞ!
あん!?何が19年だって?
だらだらとした人生。

「ぐうああああああっ!!!」
私は初めて自分の叫びで目を覚ました!
「なんだ今の夢…気持ち悪い夢だ…」
かなり精神にくる夢を、私は初めて見たのだった。
すぐさま、レポート用紙の余った紙に夢の出来事を箇条書きすると、すぐにまた横になったが、余りに脳が爽快な恐怖の状態で眠ることなど不可能だった。
暗闇の中、外の街灯のほのかな光りに照らされている、机の上の運命の本を手にして、私は目を閉じた。
そして、私はこの運命の本がどういうものであるかを、
理解したのだ。
 夢は「伝達」という言葉を私に与えた!
つまり!私が!この本を書かなければならないということだ!
おそらくこの運命の本とは、こうやって伝承されているのである。
石碑に残すわけでも無く、紙に残すわけでも無い。口伝でも無い。
「運命の本を書け」という、何者かから人が「影響」を受けて、創られるわけだ!
私の一連の行動!
私の性格
私の孤独
私の興味
私の出会い
そして夢
そうだ!先程の夢では約80年前にこの運命の本は現れたらしい!
現在は2007年であるから、1927年前後に現れたということか。
なんとも!その時代とは第一次世界大戦を経た血なまぐさい時代である!
しかし!私がその<運命の本に選ばれた筆>の可能性があるというだけで、私が書いても失敗するのかもしれない…。
あの夢での、何者か、は「成功」という言葉を使ったのだ。
ということは、失敗してきた人間が数多くいることになる。
それに、何か私の人生が残り19年だとも言っていた‥。
恐らく失敗すると、私は苦しみ続け‥そんな‥まさか…。
しかし、だらだらとしていてはいけないというのは分かる。
私は能動的な行動というものを、人生を振り返ってみると、全くやってこなかったように思う。
自然に落ちた、川に流れる葉のように、只、時代に流されているのではないだろうか。
そのままでは私は、私の意志等、なんら関係がない。
川に落ち、浮き、朽ち、溶けるだけだ。
しかし、その葉を船に変えたらどうなるだろうか?
流れに逆らうことも出来るだろう。
あの暖かい、丸みを帯びた石に止まり、笹鳴く小鳥の歌に酔いしれ、そこを楽園と呼んでもよいではないか。
しかしながら、よく冷静に考えると、
これは私が只、あの気持ちの悪い店番の嫌な印象が、
先程のような異様な夢を見させただけ、なのかもしれないのだ…。
とにかく私は書き始めることにした。
 私はまずBook Of Destiny LEFTを書き始めた
しかし、この運命という言葉…昔はどうか解らないが、今では、かなり怪しい言葉に成り果ててしまっている。
大抵は占いと組み合わさってである!
ネットで検索してみると、たまに酷いものを見るのだ!
昔も今も変わり無いのかもしれないが、これは単なる人の弱い心理を付いた詐欺のようなものだ!
どんどんと調べてみると、最終的には法外な金に結びつく!
君たちは騙されてはいけない!
猜疑心という名の盾を備え、一貫した自らを信ずる心の剣を備えるのだ。
洞察という素晴らしい鎧も秘めよ。
…おっと話しを戻そう。
 私はその本を(LEFTと略そう)左から読めるように書き始めたのだが、なんとも不思議な事が起こり始めた。
LEFTの中で、古代の神cpgrの記述をした。
cpgrは日本語で発音できないのでアルファベットで当ててある。
cpgrとは何だと思っている人がいるだろう。
夢に出てきた彼が名乗ったように思うのだ。
前記した「ブポルシ、シポグァ」という部分は、「私の名は、…」といった意味のように感じたからである。
ブポルシ、シポグァと書いてはいるものの、私はこのように聞こえたと思っているだけで、
本当は奇怪な、とても表現できない声だった。心を震わせる声とも言おうか…。
そして、以前と同じように、私の夢に再びそのcpgrは現れた。
夢に現れたcpgrは具体的な像というか、ぼやけた印象のような感じで、明確な姿は解らなかった。
が、それがcpgrであると感覚で解る。
……
シュプルプリウルボポルマエに、チからを与えようかと。
思ってる。どうする?

(その時の私は、意味も解らず頷いた)

ふゥン。
このチからが無いとお前が思ってるTwo Books Of Destinyは完成しない。
その力とは何んだと思う?

(私は、純粋に想像力だと答えた)

ブ-。繋がりなんだ。ずっと繋がってるの。人間って繋がってるのよ。
俺より頭が切れるヤツがそう創ったの。
そいつは、面白くて、捨てたらチカラを与えてくれるのよ。
だから俺もそうしてる。

(捨てるって何を?)

それはお前考えろよ。脳みそあるだろ。じゃ。
……
私は目を覚ました。
本を手にしてから、私はずっとこのcpgrの夢を見ている。他の夢は記憶に残らないようになった。
おそらく、夢で私をサポートしてくれているのだろう。
今回の夢は何か問答のような夢で、不思議な心持ちになった。
力とは繋がり…どういうことであろうか?
人間とは有象無象の全てと繋がっているということか…?
そして、捨てるとは何を?
私はそのまま考えてみて、捨てるのはやはり人間の特性である欲望だと帰結した。
私はその日から徐々に食事を制限して、禁欲生活に入った。
1週間目にはほとんど食事をせずに一日を過ごしたのだが、流石に意識が朦朧として、私はベットから起きるのが大変辛くなった。
そして再び夢にcpgrが現れた。

ブルヴペウルフまえさぁ、なんか宗教の知識あるだろ?
禁欲て、普通じゃん。
でも、まぁ頑張ったからな。ちょっとやるよ。

再び私は目を覚ましたのであるが、別段何か私に変わった所等なかった。
ふむ、普通の今までの自分である。
これは何やら只の夢で、それは神の啓示等ではなく、只の妄想のようなものかもしれないと、ふと、冷静に考えた。
「そうだ、馬鹿馬鹿しい夢だ」と思って夜の外の景色を窓越しに見ると、雲が月光に照らされてその形が大変綺麗だった。
その時、私の心がこれまでと違うことに気が付いた。
私のその「空が綺麗だ」と感じる私の感情が爆発しているのだ!
愕然と、膝を折って、
「本当に美しい!」と心から感じることが出来るのである!
私はこの感動を分かりやすい記号的表現である、涙等で表現したくない。
本当に心の内が只、震えるのだ!
ああ、この感覚を上手く表現できないのがもどかしい!
いつも見ていた風景が、美しく見えるのである!
それは私の心に変化がなければあり得ない事だ!
私と世界が繋がっている!
あの月光、自由なる雲、深遠な夜風、全て私は内包している!
美しさは私の中にもあるのだ!
cpgrが私に、この真の感情の片鱗を見せてくれたのがよく解る。
私の心のレンズは曇っていたのだろう。
それでは真実を映すことは出来ない。
私はその些細な夜の感動を心に留めたまま、一気にLEFTを書き終えた。
内容は残念ながら、ここで書く事は出来ない。
何故ならば、もしこれが完成を経るならば、「残って」しまうからだ。
私に起こった経緯で類推してもらいたい。
残るは右から読めるようにしてRIGHTを書くだけである。
しかし、何故このような左から読み、右から読むという構成の本なのだろうか?
人間の思想、左翼やら右翼を表現しているのか?
それとも、有と無を現す為だろうか…。
 私は少々気晴らしをしたいのもあって、
早速次の日、外の世界を観てみることにした。
私が<運命の本に選ばれた筆>ならば、書き終えていないとはいえ、何か私に変化があるはずである。
その変化とは昨夜の出来事から、
<真の世界を共有する心を手に入れる事>
だと予想した。
さぁ、どんな感動が待ち受けているのかと思いきや、はて、いつもの通りである。
コンクリートの道路も、電信柱も、人々も、夏空に拡がる積乱雲も
「ああ、ふむ」
と言った程の物で、そこには昨夜のような感動はない。
私が好きな動植物を観ても何もない。
cpgrは私に真の心を与えてくれたと思っていたのだが…。
 私はコンビニに立ち寄り、陳列されている本の表紙を淡々と眺めながら、少し落胆した。
「これはやはり只の夢で、私が少々狂っているのだ」
そう思わずには居られなかった。
少しでも気分を紛らわせようと、下に積まれている週間誌を手に取ろうしたときに、赤い光が見えた。
ガラス越しに見えたその赤い光は急速にその輝きを増す。
そして、爆発でも起きたような衝撃が私を襲った。
私はスローモーションの世界で咄嗟に逃げようとしたのだが、
気付いた時には、私はその赤の発光体と陳列棚に挟まれていた。
車が私に突っ込んできたのである!!
床に私の血が!流れている…!
私はその自身の状態を認識すると、頭からサ-ッと正に血の気が引いて手が震えた。
こんな状態になっているのに、私は
「cpgrは私にまた何かを与えようとしているのか!?」
と考えてしまったのだが、この想起は当たっていた。
失血により意識が朦朧としてくる。
救急車のサイレンが力細く響いて聞こえる。
店員の悲愴に塗れた顔が見える。

…そして、意識に暗闇が訪れると、私の命の電源が落ちた。
…私は、私は暗黒に溶けている。
この暗黒とは…何と心地よいのだ!
私は全てと繋がっているのだ。
しかし、瞬間的にその溶ける感覚は途切れる。ドクドクと。
行こうと思えば、私はその暗黒に行く事ができる。
そして、その溶けていき、繋がっていく私がやがて、どうなるか。
解る。
無だ。

生の素晴らしさは、只の一瞬の、感動かもしれない。
数々の感動があるだろう。だが、真に心揺さぶる感動とは、わからない。
数々の苦しみがあるだろう。だが、それは感動する心の肥やしだ。
糞でも役に立つものなのだ。
フラットな地面に花が咲く。
それよりも谷に咲く花のほうが、人目にも付かないし、それを見つけた時は君に何かを与えるだろう?
私達に光りを捕らえる目がなければ、この世界は暗黒なのだ。
私達は刹那的な光の世界の一瞬を、私達の時間で観賞してるだけだ。
私達が還る所は、ここなのだ…。

「オウフヴィフエフヴルフおお、お前、捨てたのか」
「こうしたのは俺の仕業じゃないぞ。そんなチからは無い」
「この光りの世界はそういうもんなんだ。死なないと思ってしまうのは、特性なんだよ。人間はそう念うの」
(やはり現れたか…cpgr、私は書かなければならないのだが)
「うむ、わかってる。でも俺はそのチからは無い」
「運が良ければ、大丈夫だろ」
「光りの世界の奴らが、さいころ振ってるよ、コロコロ」
「…おお、あ~~~…」
私は夜空に溶けてゆく
かつて眺めた夜の世界で、私は未来を展望した。
素晴らしい光輝く未来を。
誰もが願う希望の世界を。
しかし、結局還るところはこの暗黒なのだ。
この世という地獄に苛まれた人間を救う、一瞬と永遠の闇。
光りの翼を手に入れ、そして今、
暗闇の翼を手に入れようとしている。
全ては、暗黒の空へ舞う為に。
私は…<選ばれた筆>であっただろうか!?
半分白紙の本であるが、私は書き終えたのだ!

2007年11月6日火曜日

チュパグルイ神話/Vustzer In South Korea



916字
ちょっとイマイチな出来。
コピック彩色。

NHKで月曜日の深夜に放送されている、世界街歩きって番組が好きです。
関口の中国鉄道も好きっす。
のんびりとした雰囲気が癒しですなぁ…。

Vustzer In South Korea
1997年に韓国で発生した「ペンキ騒動」は稀に見る大惨事であった。
ヴツァーと呼ばれる少年が、韓国南部、Pignidaの街中に豚を大量に放ったのである。
しかし、それらの大量の豚を見るや、住民は
「俺のものだ、俺のものだ」
と、すぐさまかっさばいて食べるものだから、途端に居なくなってしまったのであった。
「ここは面白い」
少年ヴツァーは喜ぶと、今度は豚のシッポに筆を付けて大量に連れ、街中を白のペンキで塗り始めた。
これを見た住民は最初、「何をするか」と大変怒ったのだが、
少年ヴツァーは大変手際良く、綺麗に塗ったので小汚い街の景観は真っ白のリゾート地のようになり、返って歓迎されたのであった。
そうなると少年ヴツァーは
「なんだ面白くない」
と思って、今度は赤色のペンキで、その街中に丸を描き始めた。
さぁこれが後の大惨事となるのである。
朝起きた住民は、家の壁を見るや、気が狂って意味不明な事を叫び倒すのであった。
少年ヴツァーは「プククク、プクク」と笑うと、家々を訪ねては、
「向いの人間が描いた!」
と叫び、ある所では
「この街に親日派がいるぞ!」
と密告し、またある所では
「この赤は血だ!」
と、騒ぎ立てると、Pignida10万の住民は何故か
親日派がいる派 3万
殺人者がいる派 1万
日本のせい派  6万
と別れに別れて、戦争状態と化したのである。
しかし、余りにも日本のせい派が多過ぎて、すぐに劣勢の2派が降伏すると、
これは全く関係のない只の悪戯だと気付いて、皆しょんぼりするのだった。
すると少年ヴツァーは
「皆さん、ここに色んなペンキがありますよ。
 また綺麗に塗りましょう」
と、叫ぶと、彼らは元気を取り戻して、赤色を塗りつぶしていると、皆仲良くなったのである。
そうなると、少年ヴツァーは再び、
「なんだ面白くない」
と、思って
「ペンキを良く見てみろ!!Made In Japanだぞ!親日派の陰謀だ!」
と叫び倒すや否や、そこでは未曾有の大殺戮戦争となって、Pignidaの街は消滅したのである。
流石に韓国政府はこれは口外できぬ歴史よと、今の今まで隠してきたわけであるが、
少年ヴツァーは
「皆に知ってもらいたい」
と、世界中に知らしめたのであった。

チュパグルイ神話/Vustzer in Britain

vustzer

1040字

当初のヴツァーのイメージ落書き。

絵本みたいな感じがいいなと思ったんだけど、内容は殺伐としてるw
意味不明なブツァーがお気に入り。

 1704年の10月に大英帝国で発生した「豚戦争」は稀に見る大惨事であった。
ヴツァーと呼ばれる少年が、貴族街のあるロンドン西部のPigstonに、豚を大量に放ったのである。
その大量の豚は、どこから運んできたのか?と民衆は謎に思ったのだが、
それは解らなかった。
さて、その貴族街では、
「豚が豚が、ああ臭い」
と大変混乱して、窓を閉め切り人々は引き蘢ってしまった。
 さぁ、これが後々の惨事と繋がるのである。
少年ヴツァーは、
「プクク、プククク」
と笑うと、貴族街の玄関を一つ、一つと訪ねては、
『クーデターが起きたぞ!逃げろ、逃げろ』
と、呼び掛け、ある所には、
『海の向こうから大軍が押し寄せてきたぞ!』
と叫び、またある家では、
『魔女が豚を召喚したぞ』
と騒ぎ立てた。
 貴族の連絡網は、まぁある意味狭いもので瞬く間にその噂が拡がると、豚が外を歩き回ってるのもあって、さぁさぁ逃げよ逃げよと、慌てふためくのであった。
そうなると、貧民街の乞食どもが黙ってはおらず、一世一代の大チャンスであるとばかり、貴族街の家々に盗人に入ると、これまた、警察が反応し、騒ぎは大きくなるばかりであった。
少年ヴツァーは、
「これでもまだまだ」
と今度は政府の役人に、
「あのPigstonで、一揆が起きた!」
と、伝えると、これが軍が発動することになり、Pigstonは、正に戦争状態と化して、pigston10万の人々がそれぞれ、何故か
クーデター派     3万人
外国の大軍派     4万人
豚を召喚した魔女派  3万人
と分かれに分かれて、さも、中国の三国志のような均衡状態を作り上げたのである。
戦争とは経済を激しく疲弊させる。
 戦争状態が1年続くと、皆がりがりに痩せ細り、貴族もまた貧民もまた、軍人も飢えていた。
そこで、少年ヴツァーは
「皆さん、豚をお食べなさい、美味しいレシピを知ってますよ」
と三国の均衡地帯において、料理を始めるやいなや、
「なんだなんだイイ匂いがするぞ」
と10万の人々が、その広い荒野に集まり、豚を食べていると、
「なんで戦っていたのか」
と馬鹿らしく思えて、皆が仲良くなったのである。
そこで少年ヴツァーは、
「なんだ面白くない」
と思って、
「これは毒入りだぞ!クーデター派の陰謀だ!!」
と喚き立てるや、そこでは未曾有の大殺戮戦争となって、10万の人々は消滅したのである。
 流石に大英帝国政府はこれは口外できぬ歴史よと、今の今まで隠してきたわけであるが、少年ヴツァーは
「皆に知ってもらいたい」
と、世界中に知らしめたのであった。

2007年11月5日月曜日

チュパグルイ神話/転げ坂に巣食う者



8070字
ある意味これはBL短編なのかもしれないw

恐怖とは認識されない水面下に拡がる非日常の現れである。
とは私が学生時代に読んだ本の一説の受け売りだが、
その言葉を真に理解するには、やはり時間による熟成が必要であった。
人生の半ばに到達した今こそ、私はその熟成が必要であったことを証明する為に、私に起こった忌わしい過去を記さねばならないし、他の人にも知ってもらいたいという思いで、この手記をここに残す。
 1998年当時、私は高校に在学する生徒であった。
私が当初望んだ、第一希望の高校へは成績が十分ではなく、しかたなく不思議と人気が高まっていた男子高へ進んだのであったが、
悔恨の情が残っていたのか、2年を経た高校の生活は、私に何ももたらさない、空虚に満ちたものだった。
その当時、私は、ある先生から薦められたブルバトリムの著書である「自我の変遷」という本を恥読しており、
その内容が極めて異常で、且つ厭世的であった為にダイレクトにその影響を受けていた経緯もある。
「人生はつまらないものだ」というシニシズムな思想を私は保持しており、そんな希望の欠けた生徒の周りに信頼できる友人等できる訳も無い。
私は独りではなかったが、その「知人」のような存在として学友を見ており、私自身から積極的に会話を交わす、ということもある時までは無かった。
 そう、忘れもしない!その「ある時」!
私は1998年7月15日になんとも…忌わしい!!
思い出すだけでも血の気が失せるような出来事に遭遇してしまったのだ!
その当時の私が、なんと防衛本能というものに欠けた存在であったかということは、ヘドが出る思いだ!
私はこの出来…あああ!人とはなんと恐ろしいモノだろうか!
純粋だった私をあの瞳は……
ずっと見てい…
いや…話を進めよう…。
 私は迫り来る夏休みというものを大変待ち遠しく、心持ちもどこかそわそわしたものだった。
繰り返す日常に辟易していた私は、自我を新たな世界に導く旅を企画し、それを毎夜空想していたからである。
少年から青年へと移行するこの時期は、男の子ならば誰でも一度は思うことだろう。
知らない、新たな世界に身を置いてみたいと。
そして、…ああ!その15日に出会ってしまったのだ!
夕闇が迫る中、自転車で帰宅を急いでいた私は、校内でもよく噂されていた、「転げ坂」と呼ばれる近道を選んだ。
その近道とは、急峻の森林が周囲の視界を遮断している国道から逸れ、ガードレールの合間に出来た、
竹やぶに不思議と現れた狭い急な坂道で、雑草で荒れ果て、僅かに土が見える程度である。
私は十二分に気を付けたつもりだった。
が、その暗闇に満ちた急角度の坂ではその注意など、何の助けにもならなかった。
案の定、私は転げ坂をその名の通りに豪快に転げ落ちると、よく撓(しな)る竹で頭を強く打って、しばらくの間気絶してしまった。
そして徐々に意識が回復し、目を開くと私の視界に何かが映った。
 鬱蒼として、高々と伸びる竹林の一点透視図の景色をまず私は知覚した。
その中で、ぼやけたコントラストの、この自然には似つかわしい異物に徐々にピントが合ってくる。
私の目の前に現れたその何かとは、今思えば人であった。しかし!
それは2つの球と1つの棒状の構成物体である。
それが私の頭上で唸(うな)っているのだ!!
「ブルンブルン…ブルルーン!」
と空に向って、その構成物体の保持者が吠えている。
私はその戦慄する光景をしばらく(といっても、ほんの数秒であろうが)見て、飛び起きた!
目の前には、私と同じ制服を来た男の子が目を閉じ、祈るようにして、その構成物体を上下に、時に回転をして、念じているのだ!
「ブルン…ボプダゲデヤフテミタニ……」
私はその光景に絶句していると、彼は突然目を見開いて、
「ああ!柳田先輩!こんばんわ!」
と、快活な声で私に挨拶をしたのだ!
「お前は…一体、何をやってるんだ!」
そう私が声を狼狽えながら発すると、彼はその構成物体をしまいこんで、
「いや、よかった。回復してほんと良かった」
「お前は頭がおかしいんじゃないのか!?」
私は躊躇せずに声を放ったのだが、彼は極めて冷静な佇まいで、眼下に拡がる景色を眺めながら、
「そんな…僕は…救ったんですよ。先輩を」
と、私ではなく誰か、第三者的なものに対するようにして呟いた。
「私の命を救った…?」
私は確かに記憶が所々欠落していたとはいえ、竹に頭をぶつけたのは覚えている。
しかし、これは軽い脳しんとうであっただろうし、そんな重大な、まさか…私が死んでいたとでも言っているのだろうか!?
私はその死という言葉に思惑が到達したことに少し恐怖を感じて、話題を逸らした。
「君は私のことを先輩と呼んでいるが…?」
「そうです!柳田先輩、僕は1年の小野です。
先輩のことは入学した時から知ってました。
図書館で出会ったことを覚えて無いですか?」
そう問われて私は、沈思した。
この小野とかいう後輩?…図書館に居ただろうか…?
確かに私は時折、休み時間は図書館で黙々と本を読んでいたが、その時に私に声を掛ける者などいなかった。
「すまないが…」
と、私が言葉を濁すと、
「そうですか…でも!まぁいいんです!
 とりあえず病院に行ってはどうですか!?」
と、彼は明るく答えたのだった。
 私はベコベコに凹んだカゴの自転車を引きずって病院へ向った。
小野君も同行してくれた。
もう空のグラデーションは赤と黒とが混ざりあい、周囲は暗闇に閉ざされつつあった。
ここは大変田舎なのもあって、街灯も車の通りも皆無に近く、病院もここからは数キロ歩かねばならない。
これらの状況は、私の不安な気持ちを増殖させる十二分な触媒である。
「先輩血が出てます。少しだけど」
彼がそう言ったので、私が頭に触れてみると、ふむ、血が付着した。
「いや、そんなに深くは無いみたいだ。かすり傷だろう」
「でも頭を打ってますからね、交通事故でもよくむち打ちで辛いとかあるじゃないですか。
とりあえず行きましょうよ」
「小野君はどこに住んでるんだい?どうやら自転車通学では無いようだが」
「僕ですか?近くですよ。学校の近くです」
「そうなのか‥「転げ坂」の近くなのかい?」
「いや、学校の近くです」
学校の近く‥、私は彼がこの言葉を2度使ったことに少し違和感を感じた。
学校の近くといっても、周囲に民家等無い。
山の中腹に私が通う学校があり、それゆえ「転げ坂」という近道があるのだ。
「転げ坂」の近くならば、民家がある。
これは何かおかしい。
私は続いて先程の‥彼の異常な行動に付いて問うてみた。
「君の‥その私が倒れた時にやっていたのは一体何だ?
何か祈祷のような、念仏のような‥」
「ああ、あれは‥」
その時、ぼつぼつと雨が降って来た。
月明かりも見えぬほどの黒雲が、いつのまにか空を支配していた。
「雨が降って来ましたね。
ちょっと近くに神社があるので、そこへ行きましょう」
と、彼は走っていった。
私は見事に話題を逸らされた。
いや、逸らされたとはいえ、彼は神社へ向ったのだ。
そこでまた問えばよい。
 登校の途中で、ちらと見る程度であった神社への入り口である鳥居への階段を目前にして、私は立ち尽くした。
この神社は子供の頃、遊んだ記憶がある。
今も変わってはいないはずだ。
階段を登れば、徐々に右前方の視界に見事な落葉樹が映り始め、
その奥には無縁墓石が点在し、、ふむ、まぁ普通の神社である。
私は自転車を置いて登り始めた。
エンマコオロギの鳴き声が、深と静まった夕闇の間から囁き、無気味な空間を演出している。
その囁きは、恐怖を降り注ごうとする霊樹の序曲のように。
しかし!
私は霊などは信じない。
そんなものは心理を利用した金稼ぎの手段だ。
しかしながら、やはりこの街の信仰の場であり、延々と祈って来た人々が集った場所でもあり、見守ってくれる有り難い場所だとは思っている。
私は一応の畏敬の念を持って、神社の鳥居を潜(くぐ)ると、彼が建物の軒下で待っていた。
彼はじっと私を見つめていた。
 私は先程、「霊」という言葉を使った。
再びしつこく言うが、昨今の所謂、見えないものを利用した霊能者番組という物にうんざりとしている現状があったからである。
私が愛読して居たブルバトリムの本の影響もあるだろうが、それは如実に私の現実世界に対する見方を変え、宗教、霊、等といった物への漠然とした信仰は懐疑的となり、瓦解した。
私は淡い畏怖はしているが、他人には普通の人のように繕うだけで、
私の本当の心の内は「どうせ金と絡めてくるのだろう!」という、猜疑心の固まりである。
全く、あのxxxの馬鹿どもに私のxxの毛を煎じて飲ませてやりたい気分だ!
いつもいつも!
のらりくらりと銭を貪る訳の解らん精神の乞食共がっ!!

おっと…すまない。
私はこういう風に思考が悪循環する癖があるのだ。
話を進めよう。
 雨はやがてしとしとと降り、すぐに止む気配だった。
小野君はトタンの屋根のこれまた風雪に耐え、錆びの肌を露出した建物内<といっても、彼の後ろには10体ほどの小さな祠がある>で私をじっと見つめていた。
なんということか?彼の先ほどの天使の如き快活な知性を感じさせる笑顔は、上から肌色のペンキで一度塗り固め、そしてその上から鉛筆で雑に描いたように、のっぺりと無気味なグラデーションと化しているのだ。
彼はどうしたというのだ?
私が心配して、軒下にいる小野君に、
「どうしたんだね!君は私をずっと見つめているが!?」
そう叫ぶと、彼は
「アーーーーーーー」
「クルクル!クレゥゾォォオオオオ!」
「ハハッ!ワカッテオルマスッ!!もトろんデすともっ!」
「アアん!?!!アのファルサッカー様が!?
エエ!もトろんデすとも!」

彼はさもこれが日常であるかのように話しているのだ!
しかも、先ほどのペンキは見事に溶けて、どろんとした表情である!
私は背筋の筋肉がガチガチに硬直するような緊張で、脳は驚きと恐怖に包まれた。
「ああ、小野君…一体どうした…のかね?」
と、私が近寄って、ぼそりと力無く問うと、小野君はまるで、先程の出来事が記憶からすっぱりとカットされたようにして、
「え!?柳田先輩こそ、僕をじっと見つめて何をしてるんですか?怖いなぁ…」
と、再び天使のような笑顔で問い返されたのである。
「雨も止みましたよ!ちょっと暗いけど、急いで病院へ行きましょう」
小野君は、さっさと私をかわすと、鳥居を潜って先を歩いた。
なんともはや!これはどういうことであろうか?
私がじっと見つめていて…怖いだと!?
そんなことがある訳が無い。
怖いのは彼であるのだ!彼の異常な言動が恐ろしいのである!
「いや、ちょっと待ってくれ。
君がさっき叫んでたのは一体何だね?」
と、私は彼に「怖い」と言われた事に少々苛立って問い直した。
小野君は神社への階段を下りながら、
「僕はずっと黙ってましたけど…」
と今度は乙女の、さも私が別れ話を切り出した時のような悲しい顔をするのだ!
「黙っていた…!?君は何か…ファルサッカーが何とかと言ってたぞ?」
私は所詮人の子である。
彼を余り哀しませないように、少しばかり穏やかに聞いた。
「ファルサー?なんでしょう?」
ダメだ。彼は完全に覚えて無いようだ。
これが所謂憑依現象というものなのだろうか?
いや!私は断じて認めない。そんなものはあり得ない。
誰にでもあるような共通的な、訓示的な物をあの霊能者と自負するきゃつらは述べるだけだからだ!
ああ、なんとも!奴らの胸糞悪い銭ゲバ守銭奴の餓鬼共が…、
おっと…また…すまない。
しかし!小野君の先程の事は、全く普通ではない。
憑依されたとしてもだ。
あの…思い出すだけでも無気味なあの言葉は!
どう考えても、どこか別の世界のことを話しているかのようだ!
それは天国、地獄、霊等と言ったものではなく、もっと異質な世界であるかのような印象だ!
 私はもうこの時点で大変疲れ果て、病院には行かずに帰りたくなった。
確かに頭の傷は気になるのであるが、それは後からでもいいと思い始めた。
「小野君、悪いが私はもう引き返そうかと思うんだが…」
私が疲労困ぱい気味に言うと、彼は
「具合が悪いのですか?それは良くない!絶対病院へ行かなければなりません!
何故ならば、一見大丈夫のようにして、次の日に死んでいたりする事例が多くあるのです!
自転車に乗って下さいな!僕が押していきましょう!」
小野君はベコべコになったカゴを荷物が入るように拡げ、そして私はサドルに乗って彼が押してくれた。
確かに彼の言う通りである。
「もうあと1kmぐらいですよ!すぐです!」
私はその1kmという言葉に僅かながら希望を感じ、進んだ。
 汚れた空に流れる緑の川のような木々の景色が、さわさわと、頭上の視界を過ぎ去っていく。
自身の精神が衰弱した時に、人間ほど、何かに頼ろうとするものはない。
私がもし、独りで居たとするならば、
孤独の闇に突き落とされていたかもしれないと、しみじみと感じた。
小野君の存在はそこまで頼りがいのあるように思えて来たのだ。
確かに彼の異常な所。
何故「転げ坂」に居たのか。
謎の祈祷、念仏。
そして、あの異常な言動。
といった疑問はあるにせよ、彼は今私を献身的に介護してくれているのだ。
しかし!やはりそれらの疑問は気になる。
私は少しばかり誘導尋問的な会話をすることにした。
彼を知る必要がある。
「小野君、君は部活動はやっているのかい?」
「いいえ、僕は帰宅部ですよ」
「なるほど、私と一緒だな。
君はポケベルを持っているのかい?(当時は携帯ではなくポケベル、PHSが主流であった)」
「いいえ、それは興味がありません」
「ふむふむ、いや~それにしても、ここは無気味な感じのする通りだね。
まるで霊が、出てくるようだ!」
「僕は、先輩には悪いのですが、そんな物はいないと思います。
宗教も同じです。人の弱い心が生み出した、ただの面白いネタです。
金になるファンタジーですよ」
…なんと!彼の意見は尽く私の世界と合致しているではないか!
「おお…君は面白い感覚を持っているようだね!…ところで、
私をどこに連れていくつもりなのだ?」
そうだ、彼の疑問がもう一つ現在進行している。
この道は病院へ向う道ではない。
先程、その道への曲り角を過ぎ去ってしまったからだ!
「いえいえ、何を言ってるんですか?あそこに見えますよ?」
そんな馬鹿な!私の視界には鬱蒼とした林の中に病院と思しき建物が映っていたのだ!
「ちょっと待て、私の知っている限り、この街の病院は山を降りた先にあったのだが…」
「新しく作られたんですよ。さぁ到着しました」
私の意識は段々と朦朧としてきた。
いや、ここに病院があるわけがない。
しかし、目の前には新しい建物がある。
ああ、彼が手を引っ張っていく。
真っ暗の入り口には誰一人応対する者はいない。
断続的に意識が、眠る時のようにして途切れ途切れになっていくと、私はハッと目を覚ました。
私はベットに寝ており、周囲は白いカーテンで囲まれていた。
 ここまで回帰して見ると、まぁ夢特有の意味の解らぬ世界であろう。
こんなことは、夢の世界ならば誰にでもありえるし、誰でも記憶していないだけで、普通の話だ。
私はそう思うようにした。
何故ならば今、私は保健室にいるようなのだ。
誰かが倒れていた私を連れて来てくれたに違いない。
ほっとした私はとりあえず、家に帰ることにした。
小野君?ファルサッカー?全くイカれた世界だ。
 私は、シャッと白いカーテンを勢い良く開けると、
いきなりドバッと何かを掛けられた!
「うげぇあ!!…何だ…これは…」と、自分の体を見てみると、白色と僅かに赤色の混ざった液体で、腐ったような匂いがする!
「誰だこの野郎!」と普段冷静な私がキレて起き上がると、そこには折り重なり繋がった人体のような物が目の前にあるベッドに積まれている!
顔をシャツで拭きながら、周囲をよく見ようとすると、ドタドタと廊下を走り回る音がする。
私の目には、その白と赤の液体が入っており、痛く、そして視界がとにかく悪い。
僅かに片目を開け、ようやくベットから出ると、
折り重なったそれらは生きているようで、ぴくぴくと死に面した魚のように蠢(うごめ)いている。
そして、その繋がった部分から勢いよく先程の液体が飛び出している。
「クレゥァゾォオオオ!!ファルサッカー!!」
という叫び声が木霊する。
小野君のあの声とそっくりである!その声が近付いてくる!
私は、「あああ、夢の続きであって欲しい!」と願いつつ、恐怖の面持ちで何を行動すべきかと、しどろもどろしていると、机の上にノートが置いてあるのに気付いた。
どうやら日記のようである。
 ごめんなさい。チュパッ!私はこの のような れを
 モゴ、フモゴ、コロコロ、チゅパスルテしまっうのでっすが。
 コロチュパボブー。
…何だろうか…、これは何かの告白なのだろうか…と、戸惑っていると、窓の景色から、
こんな筋肉の付き方がする訳が無い!と思えるほどのグロテスクな巨大な物体が窓の上から現れ、それは!あの小野君が転げ坂で祈祷、念仏を唱えていた時の、あの構成物体が巨大化したそのものであった!
「ファルサッカー様!もトろんデすとも!」というあの声が近付いてくる!
「もトろんデすとも!つなぎゃリまラせぅ!!」
私はこれは挟み撃ちになる!
と身の危険を感じ、部屋から逃げ出した。
 私は学校の保健室に居たと思っていたのだが、それは少々異なっていた。
まったく新しい建物を匂わせる綺麗な廊下であったからだ。
私は、知らない所へ来てしまったという恐怖で右往左往していると、見覚えのある所を見つけた。
それは学校の離れにある図書館だ。明かりも着いている。
私は「ああ!助かった!」と、図書館に走り入ると、司書の先生が腰程の高さの本棚の向こうに居た。
「おお!柳田君!どうしたんだね!?」
と、先生が心配してくれた。
この時ほど、地獄に仏という言葉を身に染みて感じたことはない。
先生と私は、読書を共に愛する友人のような関係であり、
彼は私の事を良く知っている。
図書館2階から見える運動場で、私が授業を受けている時も、先生は私をにこやかに見守り、手を振ってくれるのだ。
よって、自分の考えている事を素直に話せる相手も先生である彼だけだった。
私が強く影響を受けたブルバトリムの本も彼が薦めてくれたのだ。
 私は説明するのに少し混乱したが、先生は私の衣服が大変濡れ、汚れていたのに気付いて、
「君は…溝でもハマったのかい!?ここに着替えがあるから着替えて来なさい」
と、私に与えてくれた。
「ああ!先生ありがとう!」
私は図書館のトイレに入ると、シャツを脱いだのであるが、べっとりと浸透しており、またズボンも汚れていた。
下着も濡れている。
私は全身脱ぐと、その着替えを履いてみたのだが、ぴちぴちの体操服で大変窮屈だった。
流石に私は他の着替えがないものかと、トイレの個室のドアを開けようとしたのだが、ふと上のほうが気になった。
私が上の空間を見てみると、そこには!あの小野君がなんとも興奮した顔をして覗き込んでいるではないか!
「うわぁああ!!」
私は個室を飛び出て、トイレから出ようとしたのであるが、
その時、入り口のドアが勝手に開いた。
私は、あっ!と仰天して尻餅をつき、仰ぎ見るとそこには、
ああ、あの!保健室の窓に現れた、あの構成物体が待ち構えていたのだ!
しかし、良く見てみるとそれは人である。
その人とは司書である春坂先生なのだ!
私はこの時点で、理解した。
「もちろんですとも!僕も、もちろんですとも!」
小野君はそう言って、構成物体を取り出した。
そして私の意識は薄らいでいった…
「ブルンブルン!!ハルサッカーサマ!」

そういうことなのだ。
小野君と私は確かに図書館で出会っている。
ここだ。そして、ずっと私を狙っていたのだ。
今思えば、私はあることを忘れていた。
「転げ坂」を見渡す事ができる新しい男子寮が出来ていたことを!
この出来事の主導者は、彼と先生と…ああ…。
「小野君、獲物を一緒に、どうだい?」
「もちろんですとも!」

2007年11月4日日曜日

初音ミク

ちょっと前に描いた初音ミク。
う~む…少し体型が大人すぎた…。服も描いたんだけどなぁ。
なんでホットドックなのか解らんですがw

女性の声で歌わせる…ふむ、面白いよなぁ。
あのキーの高い声って憧れる時がある。

DTMか…某けいちんが専門だなwイイもの作れそうだ。

18禁です。



後で検索してみようっとw

と、思って検索したら出ない…フィルタオフにしたんだけど。

2007年11月3日土曜日

チュパグルイ神話/石のリング

こちらへ退避させます。
最初からこうすれば良かったんだな…。
お暇な方はどうぞ。

*石のリング*

ch-rock.jpg

13339字

 1999年に私がやっとのことで日本の地を踏み締めた時は、
ーー人生において最高の安堵を手に入れた瞬間であったーーと言っても過言では無い。
私は現在、愛する日本において生き生きと仕事をこなし、楽しんでいる。
しかし、2008年にオリンピックを控え、チャイナライジングという現状を延々とメディアが垂れ流すが為、
あの筆舌に尽くしがたき過去の記憶を思い起こすのは容易なことである。
その事も相まって、私は毎夜悪夢にうなされているのだ!
あの…叫び声を忘れようとしても!
ああ!どうして脳は鮮明に記憶してしまっているのだろうか!!
簡単に記憶は夢により、そのままに再生され、現在の私をジグソーパズルをひっくり返したように、ばらばらにする!
私は…記さねばなるまい!
この事が恐らく私の悪夢を緩和し、そして解放するのだ!
 1999年当時、私はPCも持っておらず、また大変情報が少ない状況にも関わらず、
幼少の頃より淡い憧れの的であった中国へ(今思えば、無謀とは正にこの事である!)一人旅を決行したのだった。
少年の頃に出会った三国志がきっかけとなって、様々な中国古代の本を愛読していた私は、
それらが史実とはかけ離れた過剰な演出の創作物が多々あるとはいえ、
素晴らしい世界が拡がっているものと妄想し、僅かな貯金をはたいて大学3年の夏に旅立った。
私が選んだ地は、江蘇省南部の地、隠頭区である。
現代の中国が生み出すモノに大した魅力も感じない私は、北京などよりも、明時代に首都を築いた南京の近くに興味があった。
私はガイドも連れず、片言の中国語で、田舎のほうへ田舎のほうへと只歩んだ。
到達したその土地は、開発の波が僅かに押し寄せていたとはいえ、
古めかしい家々、遺跡が残されており大変気に入った。
が、やはり近代に入って、それらは改築されたのか、文化的な昇華を経たとは露にも思えないような遺跡も多くあって、少々落胆した所もあった。
それに、ふと沿岸の遠方を見ると、画一的な、歴史的などとは程遠い現代的な建物が、只配置(しかもそれらは全く同じデザインである!)されており、それも残念な気持ちになったのだった。
私は西洋的な形のベンチに座って、南南東の、
緑のマットを敷いたように、延々と拡がる桑畑を眺めながら、
ポケットから、ぼろぼろの文庫本を取り出した。
その本の背表紙には、拙い字で「柳田太郎」と書いてある。
「人間の想像力とは、素晴らしいものだな」
そう、私は自らを失笑して、その地を去ろうとした時、
遠くの路地辺りからだろうか?
「シャンシャカ、シャンシャカ」
「ニィー!クゥァ!バォゥ!
 ニィ-!クゥァ!バォゥ!」
という掛声を聞いたのだった。
 私はーーその祭りのような掛声が何処から聞こえてくるのかーーと振り返って見た。
視界には街路樹の奥に小汚い家々が連なっているのが映った。
そして更にそれらの奥の路地から、その掛声は聞こえてくるようだった。
「ニィ-!クゥァ!バゥ!…」
声はドンドン右手に、東の方へ遠のいていく。
中国のお祭りと言えば、爆竹が鳴り響くような派手なものだと思っていたのだが、この掛声の音からして、
それはまるで日本の祭りのようである!
「まさか!ここに祭りの元祖が残っているのか!?」
私は、先程落胆していたこともあり、反動となった非常な期待は急膨張した。
文庫本を手に持ったままに、ゴツゴツとして荒れ果てた鋪装されていない道を横切って、その掛声の元へ吸い寄せられるようにして近付いていった。
ちらちらと家々の合間から見える彼等の姿は、何か神輿のようなものを担いでおり、腰辺りにその「シャンシャカ」という音の源泉があるようだ。
彼等に近付く為には、更に奥の路地へ行かなければならないのであるが、なかなかその道が見つからなかった。
しかし、やっとのことで見つけた北へ向う道は、石壁が高く両側にそびえており、まるで迷路のようである。
正にこれは!
モンゴルの騎馬隊を防ぐ為に作られた古い城壁!
「ああ!なんとも!残っているではないか!」
と、私はそのままに残されている遺跡に大変感動し、
そして耳を澄まして、掛声の聞こえる方向へ歩いていったのであった。
 私は、その迷路のような石壁(それは日本の石垣とは異なり、大変大雑把に積み上げられた物である)の中で只々、その掛声が聞こえてくる方向へ歩いていった。
しかし、壁、少し歩くと、またもや壁である。
「この道順…ではない。ええっと…こっちか?」
少々この迷路に辟易(へきえき)してくると、
徐々に不安な感情が渦巻いてくる。
「ああ、やはり案内役は必要だったな…」
私は、周囲の石壁の景色の中、唯一の広い空間である空を時折眺めたのだが、
経済発展を遂げる直中の、工場から流れてくる煙りに塗れた空は、お世辞にも美しいとは言い難かった。
その光化学スモッグが吹き荒れるような汚い空を、ふと見る度に、何か、私の淡い期待の心持ちが段々と、くすんでいくように感じた。
人間の素晴らしくも、危険な衝動。
そう、私の好奇心もまた掠(かす)れていくのだ。
そのくすみ、そして掠れた後に、私の中から現れた感情とは、恐怖である。
未知の土地で、
言葉もさほど通じず、
訳の解らぬ祭りの掛声に惹かれ、
ほぼ迷い、
何時の間にか私は……
足を止めているのだ。
「どうする…今ならまだ明るいし、戻れる可能性がある…」
しかし、この葛藤(かっとう)を制したのは、やはり幼少の頃より育(はぐく)まれた期待の記憶であった。
私は何の為にこの中国へ来たのだろうか!?
そうだ…それは淡い期待の崩壊か、または新鮮な驚きと発見の何れかを、
私はこの目で観る為にここへ来たのだ!
奥の通路を横切る集団!
彼らが私に、その答えを示してくれるに違い無い!
「恐れる事等無いのだ…」
私は文庫本をお守りのごとく握りしめた。
何かに頼るようであり、また、守護神にでも守ってもらおうとするかような動きだった。
私は息を飲んで、近付いていく。
 未知の事物を垣間見ようとするこの心地よい恐怖!
私は石壁に、左手をそっと添えて、息を殺して覗いた。
が、再び集団は西のほうへ向きを変えフレームアウトしてしまった。
「くそ、もう少し…」
この複雑怪奇な迷路は先がどうなっているかが、兎に角分かりにくい。
かつて中国を完膚なきまでに叩きのめしたモンゴルの騎馬隊や大日本帝国陸軍と言えども、この迷路には悩まされたに違い無い。
時にこの石壁は、3m程の高さであるかと思いきや、50cm程の高さに変化したりしているのだ。
私が当初大雑把な石壁と感想を述べていたが、その記述は少々異なっていたことを訂正したい。
厚さが60cm程の重厚な部分も見られたからである。
何故にこのような迷路を造り上げたのだろうか?
恐らくは敵を誘導する仕掛けであろう。
水も人も流れやすい所へ流れていくものなのだ。
その心理を利用したこの石の迷路というものは、侵入した騎兵や歩兵を苦しめたに違い無い。
私は石壁の高さが1m程の所で、その壁をよじ登った。
私が求める集団こそ見えなかったものの、彼等が向おうとしている所が何処か、大凡(おおよそ)の予想がついた。
彼等が向っているのは太湖と呼ばれる湖である。
 私の目に映る、山々の稜線と海のように広大な湖の遠景は、先程の恐怖、好奇心の心情を僅かであるが、沈静させた。
そのふとした安らぎは、かのブルバスが自我崩壊の中で記した「墜落」のある一説を読んだ時のような心境である。
私は、雄大な景色が漸次(ぜんじ)に精神を回復してくれるのを嬉しく思ったのであるが、
しかし、この周辺の迷路に何やら異様な石群も現れ始めたのを想起し、またそれらが増殖しているのを確認すると、その安息を得た精神はパラパラと崩れていった。
ある程度、その迷路を俯瞰(ふかん)した映像を脳に焼きつけ、そしてよじ登った石壁から飛び下りると、途端に視界は陰鬱(いんうつ)な迷路が占め、私に再び恐怖が襲うかと思われたその時、
背後に何か、生物の吐息を感じた。
こめかみに何とも言えぬ汗が伝い、私は降りて膝を着いたままに動きを停止した。
しかし、その吐息はやがて、
「クンクン」
という鳴き声に変わり、私はほっと安堵して振り返った。
小さな痩せこけた子犬が居たのであった。
恐らくハスキーとシェパードの混血であろうか?
大変愛くるしく、その、人に慣れたような仕草からして捨てられたのであろう。
私は、不意に現れたこの子犬を、迷路に苛(さいな)み、苦しむ心境を共有する友人のようにして膝を折って撫でてあげていると、また、
この子犬が腹を空かせているのだと気付いて、私も今日は食事を取って無い事を思い出した。
 寂然(せきぜん)とした石壁の迷路の中、既に太陽が中天を過ぎ去った午後の異様な石群の斜に射す影は、まるで私の体を射すかのように、その漆黒の色と尖鋭(せんえい)を見せ始めた。
私は食事を昨日から取っていない。
非常に安価な値段で食事が取れるのであるが、中国に降り立ち、隠頭区に於いて始めて口にした料理というものが大変合わなかった。
一般的な、日本人が想像する中華料理とは全くかけ離れたものであり、あの見栄えからも、
何か皮のようなコリコリとしたモノばかりであったからである。
私は偶々(たまたま)、そのような不味い店に立ち寄ったのかもしれないが、初めての体験というものは人に鮮烈な印象を与えるものだ。
他の店に寄ってみたものの、その地区の料理は全てそうであり、慣れることが出来なかった。
しかし、そのままでは流石に腹が減ってしまう。
私はもしもの時の為にと、日本から持ってきた缶詰め類の保存食を食べたのであった。
私の今回の旅行の日程は、一週間と予定していたのだが、その保存食のストックは3日分程であるので、なるべく節約したかった。
しかし、目前の、空腹に飢え、毛並みも乱れ、また、人に捨てられた記憶を乗り越え、
信頼と忠誠を保持するこの子犬の姿に、私は何か心通うものがあった。
それは私の愁然(しゅうぜん)とした精神のパズルを補うピースのように。
私は魚類の缶詰めをその子犬に分け与えた。
すると、その子犬は私の目を見続けて、指示を仰ぐようである。
「いやいや、食べていいんだよ」
私が一切れ口にすると、それを合図のごとくして子犬も食べ始めた。
なんとも…この子犬はよほど不味いものを食わされていたのだろう。
「ハムッ!カタカタ!フモグフモグ…」
と、こんな美味しい物は食べた事がないといった喜び様だった。
子犬がその缶詰めに夢中になっている姿を見て、
私はそっと立ち上がり、そのままゆっくりと迷路の奥に進んだ。
のであるが、ふと後ろを振り返るとその子犬が付けて居た。
「ふむ、もう食べたのか」
と、私が戻って缶詰めを確認するとまだ残っている。
すると再びその子犬は食べ始めたのである。
「なんとも…お前は礼を知っているんだな」
私は大変その子犬の心、精神が気に入って名前を付けて、この迷路を共に踏破することにした。
「私の家には、リムという犬がかつて居たんだが…どうだい?」
そう話し掛けると、シッポを振って喜んでいるようだった。
私は旅の友を得て、非常に自信が湧いてきた。
しかし、その時、
「ニィ!クゥァ!バゥ!」
という掛声が風に乗って聞こえてくると、
私の精神は途端に表面を白く曇らせ、恐怖と好奇心がガラス窓に垂れる雫の如くして私の中に墜ちて染みてゆく。
しかし、私にはもう孤独という恐怖は払拭されたのだ!
「さぁ!リム。付いておいで!
 私は見なければならない!」
この時、私は希望の光りを自ら掴むようにして鼓舞していたが、悲しくも、この石の世界に対する認識と理解とが進む内に、
その光りを易々と遠ざけてしまうのであった。
 もしも、私の姿を見た地元住民が居るならば、その光景を奇異として見るに違いない。
石壁の迷路に日本人と中国の犬が闊歩(かっぽ)しているのだから。
そして、心の内で哀れんでいたであろう。
私が先程使い始めた描写、石群。
この迷路にその石群が現れ始めた時は、その形が何か、常人には解り得なかっただろうし、私も最初は理解が出来なかった。
只のまる長い石灰石のような物だと思っていた。
しかし、それらが徐々に増えるにつれ、その形を変化させているのを知覚した時に、私は初めてこの石群が何であるかが、朧(おぼろ)げながらも、解ったのだ!
そして、その石群は、私が追い求めている集団とリンクしているのは間違いない。
その石群は、偶像の類いの形のようであるが、しかし!
それは人の手による人工物ではない、と思われる程の奇怪な形である。
自然の風化による奇跡であろうか…!?いや!
狂神が作り出したモノとしか考えられない!
人間が隠したくなる情報のさらに醜悪な物をその石群は現しているのだ!
私は、その石群の理解が増していくと、おぞましい恐怖が背筋に走ったのだが、その時、リムがその石群の一つに近付いた。
そして…それを舐め始めたのである!
私は、犬が泥に含まれる栄養物等を摂取する習性を知ってはいたが、その目に映る映像が極めて精神錯乱を及ぼしかねないものであることを恐々と感じて戦慄すると、
すぐさまリムを抱き上げて小走りに、まるでその映像の記憶を背後へ振りほどくかのようにして逃げ出した!
リムは私の目を見つめて、キョトンとしているが、私は顔面蒼白である。
私は、先程、脳に焼きつけた迷路を俯瞰した地図を思い起こして只只、
「太湖へ太湖へ…」
と、リムを抱き締め、呟きながら、地に足が付かないような性急な足取りで進むと、
青臭い雑草と廃棄物の入り交じる水の香りを感じた。
もう迷路は終わりを告げていたのだ。
石壁の迷路は進む内に徐々に、その高さを無くし、私の視界には山々と湖が映った。
閉塞感漂う世界から、この開放的な情景への移行は、私にふとした安心感を与えてくれる。
リムを降ろして、暫く二人で見入ってしまった程だ。
かつての偉大な文人が、この景色の虜になったわけである。
私はその迷路を脱出したと解るや否や、石群はその石壁に張り付くようにしてあるので、
振り返るという行動だけはしまい、と心に決めた。
リムは何時の間にか私に大変慣れて、私の左足にちょこんと寄り添っているので、もうしばらく、
というより、この旅が終わるまで共にすることにした。
この決断は私の愚かな旅路で唯一正しい選択だった。
いや、正しい選択であったか等は、読者の判断に任せよう。
もしリムがいなければ…ふむ、私は想像することを停止する。
集団は湖を前にして旋回し、そして、左前方に見える突出した岬へと向っていた。
その時は、もう彼等は言葉を発してはいなかった。
私とリムは、彼等が振り向いたとしたら気付かれてしまう距離にまで近付いていた。
 葦(あし)が生い茂る湿地帯に添って、集団はその岬のほうへ行進していく。
私とリムは彼等よりも高い土手に身を潜め、その長い葦にひっそりと、その姿はまるで伏兵のようにして、彼等を観察した。
先頭に旗を持つ人間が一人、神輿を担いでいる人間は四人、そして神輿に乗っているのは一人という構成だった。
神輿は神の乗り物であり、乗る事は禁じられている所が日本では多々あるわけだが、これはまた違ったものなのであろう。
何とも神妙な顔つきで揺さぶられている、その神輿に乗った主役と思しき人物は16、7才の男性に見えるので、恐らく、この集団の平均年齢は15~20才ぐらいではないだろうか?
そして、彼等の行進によって
「シャンシャカ」
という音も聞こえてくるのであるが、それが何によって鳴っているのかは解らなかった。
彼等の腰の辺りに鈴のような物を付けているかと思ったのだが。
私は次いで、その神輿自体に視線を向けた。
年月を経た古い木材で、華美な装飾はなく質素だった。
しかし、私はその装飾に、あの石群の形が施されているのを見ると、
「ああ!やはりあの迷路の石群と関係があるのだ!」
と、実際に私の思惑が的中したのを確認し、大変喜悦(きえつ)した。
そして、今度はその旗手に目を移すと、何やら旗に漢字で文字が書いてある。
私はこの時、漢字が読めるという事実に大変興奮したものだ!
少々掠れていたとはいえ、こう書かれてあるようだ。
      真~包~到神
「神」と書かれてある!
正(まさ)しく未知の神を崇(あが)める祭事に違いない!
「到」は日本語からして、到達という意味合いであろう!
掠れた読めない字は、その時は少し考えたものの、神という字に興奮して、さほど気にしなかった。
しかし!私は今思えば、その掠れた字こそが極めて重要な文字であったと断言できるのだ!
この時が大惨事に巻き込まれる瞬間であったとしか言い様が無い!
ああ!私がこの掠れた文字を読めてさえいれば!
私はそこで日本へ引き返したというのに!!
私はその集団から目を移し、彼等の向う岬を見てみた。
生命力豊かな緑と、死を思わせるような赤のグラデーションを為す森林があり、
そしてそれらの合間に白装束のような衣装を着た人影がちらりと見え、そして数々の村民が待ち構えているようである。
「なるほど、あの石の迷路において人と会わなかったのは、こういう訳であるのか」
と、妙に納得すると…
私はその祭りの集団を追ってしまったのだ…。
 既に日没が過ぎ、赤黒い空が湖面に映って、幻想的であると形容したいところではあるが、
先程の雄大な景色は、太陽の光を失うに連れ変化し、
近辺の産業廃棄物の腐ったような匂い、そして生活排水の濁った暗い深緑の水面と相まって、どこか無気味であるとしか言い様が無い。
祭りの集団を追うと、その岬も近付いてくる訳だが、何やら人が集まっているとはいえ、日本の祭りのような賑やかさは無く、非常に静かで、何か厳粛な雰囲気だった。
岬の鬱蒼(うっそう)とした森林に私が追い求めてきた集団は吸い込まれていき、完全に見えなくなってしまった。
見えなくなる瞬間の彼等の表情は、神妙というよりも、どこか…そうだ、恐怖に包まれていた。
その恐怖の表情は私に伝染し、周囲の無気味な雰囲気と交わり、背筋が凍った。
しかし、この時の私の心理は、恐怖と共にある好奇心のほうが強かった。
恐らく誰も知らぬ奇祭を垣間見る最初の日本人であるのだ、と考えると、
必ず見届けてやるという功名心が、掻き立てられずにはいられなかった。
私達は葦が蔓延(はびこ)る湿地帯に隠れつつ、追い掛けてきた訳だが、流石に視界が悪くこの場に居ては、その儀式を見る事ができない。
「静かにしておいてくれよ?」
と、リムを見たのであるが、この子犬も何か恐怖に包まれたように、只、その岬を見つめていた。
私はリムを抱いて、その湿地帯から出ると、素早く森林の木陰に隠れて、そろそろと接近した。
村民は既に、岬の先端よりやや後方の広い荒れ地に集まっているようで、そこから篝火(かがりび)のような光りが奥から漏れていた。
 太陽が完全に沈み、月の明かりが森林に降り注ぎ始めた。
私はしっかりとリムを抱き締め、足音を消すようにして、更に近付くと、
村民が1m程の高さの矩形の祭壇と篝火を、凹字に囲んでいるのを確認した。
そしてその祭壇の前に、追い掛けていた集団の彼等と白装束のような姿の男を、見たのである。
 常緑樹林(じょうりょくじゅりん)の深いブルーの森林はまるで、月明かりのホワイト、そして篝火のレッドの光りを溶かす筆のように、天に伸びていた。
湖面からの吹く風が、さわさわと、その森林を撫で付け、静かな心地よい音が地に降り注ぐ。
私はその神秘的な雰囲気を、自然現象というよりも、彼等が作り出したように感じた。
祭りは最終局面に近付きつつあることが、その厳粛さから伝わってくる。
そして、遂に始まった。
白装束の男が矩形の祭壇に登ると、その男の前面に簡易な寝台が置かれた。
男は先頭で旗持ちをしていた少年を呼び寄せた。
少年の表情は正に、恐慌状態に近く顔面は引きつり、足が震えている。
すると突然!
「ニィ-!クゥァー!バァゥーーー!!」
という村民の大合唱が森林を震わせる!
白装束の男は懐(ふところ)から何かを取り出した!
私はそれを凝視(ぎょうし)すると、キラリと光り、荒く研がれたような刃物そのものであった!!
「まさか!この現代に於(お)いて生け贄の儀式が残っていたのか!!」
私は本の知識により、確かに中国人による残虐な刑が多々行なわれてきたのを知っていたが、それはやはり過去の遺物であり、文字の情報であり、とても空想的だった。
彼等が近代まで赤子の肉のスープや猿の脳みそなど、グロテスクな危険な部位をその文化から食していたとはいえ、今は1999年なのだ!
私は気絶する寸前で、刮目(かつもく)してその光景を只見る他なかった。
しかし、この私の飛躍しすぎた妄想は少々異なっていた。
白装束の男は少年を寝台に寝かせ、少年の足下辺りに立ち、
(ここからが背の高い村民のおかげでよく見えなかった)何やらごそごそと何かを捲(めく)っているようだ。
そして!その時!
「シャンシャカシャカ…、シャンシャカシャカ…」
と音が鳴り響いたのだ!!
そんな馬鹿な!!
少年は微動だにしていないのにも関わらず、音が鳴るわけがない!!
何か未知の物体が揺さぶられているとでもいうのか!?
儀式は最高潮に盛り上がる!
怒号が響き渡る!
「ニーーー!クゥァーーー!バォーーーゥ!」
そして…男は刃物を天にかざした。
 白装束の男はその手を降ろすと、何やら慎重に、細やかな動きを示した!
その時!
「アィヤァァァァアアアアーーーッ!!」
という少年の叫び声が木霊(こだま)する!
「ニィークァーーーバゥーーー!!」
同時に、村民の大合唱が彼の叫び声を吸収し、
その場にいる皆全てがトランス状態に陥ったかのようだ!!
ある村人は、踊っている!
誰が持ってきたのだ!銅鑼(どら)を鳴らす者までいる!
それはしばらく延々と続き、そして!
聞こえる!共に鳴っている!!
共鳴する音がある!
「シャカシャカシャンシャカ!」というあの音色が!
そして…、「シャリン!」と何かが落ちる音がした。
途端に再び、あの厳粛に満ちつつも、興奮の内にある静寂が訪れた。
それは、まるで時が止まったかのように…。
 白装束の男は刃物を置き、何やら細い糸のようなモノを持って、再び何か細やかな動きをしていたが、先ほどの鈴のような音はしなかった。
その作業の間に、神輿を担いでいた少年が一人、悲壮に塗れた表情で現れ、祭壇に登った。
彼の両手には、何かロウソクを灯(とも)す燭台(しょくだい)のような祭器があった。
その祭器は中心に、親指よりも少し大きい円柱状の棒のような形を備えており、その先端は僅かに膨らんでいるようだ。
白装束の男はその細やかな動きを終えると、その燭台の先端部分に何かを乗せた。
私が居る所からはそれが小さく、何かは解らないが!
その祭器の円柱には、血が滴(したた)っているのだ!!
少年が高々とその祭器を掲(かか)げた瞬間!
「シャンシャカシャカシャカ!」という音が再び鳴り響いた!
村民の大合唱が再び起こり、狂ったように踊り、喜んでいる!!
そして!岬の先端に隠れていたのだろうか!!
一頭の馬に乗った青年が現れ!そしてその祭器を受け取ると、私の所へ向ってくる!
「これはまずい!」
私は咄嗟に隠れると、その祭器を持った青年は石の迷路のほうへ疾駆(しっく)した。
危ない所だった、しかし!あれは一体何なのだ!?
祭器に載せられたあの物体は!
この時は私は未だ、完全に理解出来ていなかった。
 儀式を終えた先程の旗を持っていた少年は、男達に両脇を抱えられて祭壇の前に移され、顔が青ざめており、ぐったりとしていた。
私は目眩(めまい)がするような混乱状態で、ふらつきながらも覗いていると、今度はその祭器を持ってきた少年が寝台に寝かされた。
すると再び、先程のような叫び声と大合唱、
そして!あの鈴のような音が鳴り響くのであった。
同じようにして、馬に乗った青年が現れ、その祭器を持ち去っていく。
私は、この繰り返される、おぞましい恐怖の儀式を
気絶しそうな心持ちで眺めていたが、
もう既に恐慌状態に陥っていたに違い無い。
目も虚ろで、足下もおぼつかないような有り様だった。
しばらくすると、一連の儀式が一段落着いたようで、辺りは静寂に包まれた。
私が追い掛けていた集団の旗手、神輿を担いでいた四人がその儀式を終えたのだ。
しかし、まだフィナーレでは無かった。
遂に、神輿に乗った少年の順番が訪れたのだ。
私はこの祭り、儀式の全貌を垣間見てはいない。
「よく解らないあれは何だったのだ!
 あの燭台に置かれた物体は!」
このままでは、私のこれまでの苦労が水の泡になってしまう。
何が行なわれているか、私はちゃんと視覚に捕らえなければならない!
例え、その行為が無謀であろうとも!
私は、背筋を伸ばし、深呼吸をすると、精神を整え、
そろそろと、更に近くに寄っていった。
村民のすぐ後ろの木陰まで!
私のこの行動は、好奇心がもたらしたとはいえ…
全くの愚行であった…。
 主役と思(おぼ)しき少年が寝台に寝かされた。
私の視界には、その少年の足の裏が見える。
ここならばはっきりと見る事ができるのだ!
白装束の男は刃物を天に掲げ、そして…
ああ…私は自らの好奇心を呪った。
見てはならなかった。
そして…捲ったのは彼のスカート状の前掛けである。
それから…ああ!脳が、記憶が再生することを拒む!
彼は…!少年は!
……包まれていたのだ……長く…。
私は、この儀式が何であるか完全に理解した。
そして次の瞬間、ずるりと血の気が引いて、意識は朦朧とし、膝を折って倒れ、しっかりと抱き締めていたリムを落してしまった!
「キャン!」
という鳴き声をリムが発した時、私は、はっとして周囲を見た。
近くにいた男に見つかってしまったのだ!
男は何かを叫びながら、すぐさま私の腕を掴むと、リムを指差している。
どうやら私が泥棒かと勘違いされているようだ!
「違う!私は断じて盗み等…!」
辿々(たどたど)しく中国語で叫ぶと何やら男の様子が変化した。
男は近くに居た村民を呼び寄せ、私の身体検査を始めたのだ。
私は盗人などではないことを証明するために、甘んじてこの検査を受け入れた。
この一騒動の間に、主役の少年の儀式は行なわれている、が、もはやその光景は目に映らない。
私は戦々兢々(せんせんきょうきょう)とした心持ちであり、
体は震えていた。
そして、男がある部分の検査を行なった時に、彼は深刻な顔つきを和らげ、にっこりと笑みの表情を浮かべた。
「ああ!わかってくれたのだ!無実であることを!」
私は安堵し、微笑みを返した。
しかし!それは正に、ぬか喜びだった。
男は白装束の男に向って叫んだ。
そして私を指差している。
白装束の男は、ふむ、と頷いて、手招きをした。
私を検査した男は、ゆっくりと聞き取れる中国語でこう囁いた。
「君 ある 資格」…と…。
 「違う!そんな馬鹿な事があるか!
  私は僅かであるのだ!やめてくれ!!」
そう叫んでも、それは空しく響くだけだった。
私は祭壇に無理矢理登らせられると、寝台に先ほどの祭器があった。
燭台に載せられた物体を確実に私は、見た。
リングだった。
ピアスのように鈴が付いている、生々しい血の滴るリングが…。
そして私は三人の男に寝台に寝かされ押さえ付けられると、秘部をあらわにされた。
白装束の男は、篝火の反射する無気味な笑みを浮かべて、刃物を持った手を天高く、かざす!
「うわぁあああ!やめてくれーー!!!」
そう私が意識混濁の中、叫び倒すと、
ああ…私には守護神が付いていた。
私の危険を察知したリムが、私の左腕を固定している男の足に噛み付いてくれたのだ!
「アィヤッ!」
と痛がる男の隙をみて、私は左腕を素早く振りほどくと、右腕を押さえ付けている男を押し倒し、両足を押さえ付けている男を蹴り倒した!
白装束の男を振払うようにして、祭壇から飛び降りると、脱兎のごとく逃げ出した。
私は恐怖に怯え、震える手足で藁をも掴むように遁走した!
「リム!ああ!リムを置いてきてしまった!
 ごめんよ!命の恩人を!あああ!!」
そう叫んで岬の森林から飛び出し、振り返ってみたが村民が追ってくる様子はなかった。
が、小さな鳴き声が近付いてくる。
「キャンキャン!」
という鳴き声が森の中から聞こえる!
リムが追ってきてくれたのだ!
「ああ!!ありがとう!ありがとう!」
私はリムを抱き締めると、ふと涙がこぼれ落ちる程感激したのだった。
しかし、感慨に浸っている時ではない。
彼等には馬があるのだ。
私達は急いで葦を掻き分け、土手を駆け上がり、そしてあの石の迷路を目指した。
 月明かりに照らされた銀箔の雲は、
吹きすさぶ風によって低くたれ込め、
私に迫るかのように、地を求めるかのように。
薄い暗黒のヴェ-ルに包まれた土手の道を駆け抜け、這う二つの影。
私は迫り繰る恐怖に、追い立てられ只只疾走する。
思考は前方の視界を処理しつつ、先程の絶句する光景を想起していた。
そして、私の一連の好奇心による愚行を嘆き、また私のこれまでの愚かな感銘をしてきたことに後悔し、天を仰いで叫んだ。
「ああ!私は愚鈍な旅人だ!私は間違っていた!!
 当初のあの期待を込め、私の内から現れた表現の数々!
 厳粛?神秘的?何をいうか!
 彼等がずっと叫んでいたではないか!
 あれこそ、狂神ニクバゥの召喚の儀式そのものではないか!
 ああああ!彼等はあの儀式を終えて、狂神の加護を得るのだ!」
私は半分パニック状態であった。
この地を脱出し日本に帰るには、再びあの石壁の迷路を踏破しなくてはならないので、このままの精神状態では不可能だ。
しばらくして、ようやく私は湖面から吹き付ける冷たい夜風と、少々の腐臭の闇香を感じて、冷静を取り戻しつつあった。
走り去る景色に映り始めてくる。あの石の壁が!
丁度その時、厚く水を含んだような灰色の雨雲が月を遮り、周囲は更に黒の帳(とばり)が降りて視界が悪くなった。
しかし、私はこの事を喜んだ。
「はっはっは!ああ!私には天の加護もあるではないか!
 あの石群が非常に見えにくくなった!
 全くありがたい!」
そう叫ぶと、私は二度と見まいと思った石壁の迷路の入り口に到達し、ある事を思い出した。
「ああ!私の守護神!リムを連れていかねば!」
右手からようやくリムが息を枯らして、追い掛けてきた。
「リム!この迷路を共に抜けよう!
 なあに!迷路の地図は脳に焼きつけてある!
 踏破したならば、とっておきの缶詰めで食事を取ろうではないか!
 どうしたんだ?疲れたのかい!?よし…」
そういって私はリムを抱き上げようとしたが、
するりとリムは、私を交わし、暗黒の石壁の迷路に近付いていった。
闇の中に溶けていくリムを半ば呆然と見て、立ち尽くしていると、
リムは
「ハッハッ…」
と何やら興奮している様子だった。
「リム…どうしたんだ?一体何を…」
私は、恐る恐る暗闇から聞こえるリムの吐息に耳をすまし、方向を確認した。
「そっちにはあの石群の像が…あったはず…」
瞼を閉じたような暗闇の中で、石の偶像の姿形が具体的に目に浮かぶ。
くすんだ白色の…
親指を3つ重ねた程の大きさで…
先端が膨らんでいる…
棒状の反った突起物。
近付いて、石壁を前にした私は、リムが足下にいる気配を感じた。
すると…ああ!!
あの…音が鳴っている。
「ハッハ…シャンシャン…」
「ハムッ!ハムハム…シャリンシャリン…」
そんなまさか……!!あああっ!!!!
天空の雲間から月光が射し、黒い帳は地に落ちた。
その、そそり立った棒状の突起物の先端に、物体が見える。
掛けられているのだ!!あのリングが!!!
私の視界には!五つの石像が映り、五つのリングがある!
五輪がある!!
ああっ!あの儀式で、馬に乗った青年が祭器を持ち去った時!
私はさほど気にしなかった!
彼等は、献上しにきたのだ!この狂神へ!
そして次々に理解が理解を生む!
何故に!リムは私のように、迷っていたのだろうか!?
いや、そうではないのだ…。
リムはこの迷路に住んでいたのだ!!
この恐るべき祭り、儀式は、
増殖している石像群を見る限り、多々行なわれているに違い無い!
江蘇省だけでも7500万人近くの人間が住んでいるのだ!
その半分が男性としても、3750万人!
栄養が片寄るとはいえ!食料であるではないか!!
 煌々(こうこう)と照らす月の明かりは、全てを露呈(ろてい)した。
私は完璧に狂った。
「イャャアアアーーーー!!」
叫び狂う私は迷路を慌てふためいて…そして…
ここからの記憶は完全に喪失した。
後の聞く所では、私は空港で倒れており、意味不明な事を口走っていたらしい。
そして、はっと意識を取り戻した時は飛行機の中にいたのだ。
恐らく「日本へ日本へ」と嘆願するように、呟いていた事から親切な人が手続きを経てくれたのだろう。
私の無謀な旅路は、日本の大地に降り立った時、終わったのである。
 最後に重要な記憶を呼び覚まそう!
私がこの大惨事に巻き込まれるきっかけとなった、あの旗の文字を!
ここまで、お読みになったのならば、既に理解して頂けただろう!
掠れて読めなかったが、今ならば断言できる!
解らなかった二つの文字とは、
「性」と「茎」の二字だ!

2007年11月2日金曜日

18禁です。

何か昔からずっと悩んでたけど、髪の毛の問題が更に解決しつつある!
試行錯誤とは何と重要なことか…。


でもこれでスピードアップっす。髪は短い子を描くのが好きだけど、長いのも対応できるでしょう。

これからは液体の描写も模索しようっと。

今回はちょと巨乳すぎたかも…これぐらいが限界です。
ボーイッシュでこのロリータ体型の女の子は個人的にいいなと思うっす。
ちょっと季節外れですが。








あ、みかんのアイスクリーム、練乳入りです。
そんなのあるのかって話しだけどw

ちょっと修正しました。
乳首を45:55の位置へ変更。他にもちょこっと。
ある記事では、統計学によってこの位置が美しいらしい…。